2025年5-6月号
“笑顔”と“共生のまちづくり”につながる取り組みをレポート
認知症の方の気持ちを穏やかにするといわれる「認知症マフ」。みっきいマフの会では、手編みのマフを病院や介護施設へ届ける活動を進めています。
マフとは、両端の開いた円筒状に編まれたニットの防寒具です。これに触れたり手を通したりすることで、認知症の人の気持ちを穏やかにする効果があるとされ、認知症マフは発祥のイギリスで「Twiddle Muff(トゥイドル マフ)」と呼ばれています。
現在代表を務める森田さんが「みっきいマフの会」を立ち上げたのは、令和5年、認知症の当事者や家族、専門職がオンラインで交流する認知症サロンに参加したことがきっかけでした。ケアマネジャーとして働く傍ら、自分が暮らす地域のために何かをしたいと考えていたところ、ここで認知症マフの存在と効果を知りました。認知症高齢者と日常的に関わる仕事だったことから、マフ作りによって認知症に関心を持つ人が集まり、交流も生まれると思い、友人や仕事で知り合った看護師などに声を掛けて活動を始めました。
病院や介護施設などからの依頼に応じて、マフの会では20名の会員が一つ一つマフを手作りして無償で届けています。マフを使う人が好きなものや昔の職業などを病院や介護施設を通じてヒアリングし、それを飾りやデザインに取り入れ、目で見て、触れて楽しめるマフに仕上げます。「生活歴からこれまでの暮らしを想像し、気持ちが和らぐよう心を込めて手作りしています」と会員の皆さんは口をそろえます。
会員は「ゆるく楽しく」を合言葉に、毎月第3土曜日に集まり、おしゃべりをしながらマフ作りを楽しんでいます。福祉専門職だけでなく、趣味の編み物を生かしたいと集まる会員もいますが、全ての会員に共通するのは、認知症の方、一人一人に寄り添いたいという思いです。
「まだまだマフを普及させる余地はあります。その存在や正しい使い方を伝えるだけでなく、私たちの活動によって認知症の方への理解が地域に広がれば」と森田さんは語ります。マフの会では、認知症をテーマにした出前講座や手作り小物の即売会なども開催し、認知症の啓発活動に力を入れています。「認知症になっても安心して暮らせる地域に」というマフの会が描く理想は、一つ一つの認知症マフを届け、また活動の幅を広げる中で、一歩ずつ実現に近づいています。
実際にマフに手を入れると、気持ちが落ち着くように感じられました。そして、手作りの温かみこそが、使う人にさらなる安心感をもたらしているように感じました
みっきいマフの会
※定期的な活動は、毎月第3土曜日の午後に行っています。
活動への参加を希望する方は代表の森田さんの携帯電話(090-1136-1450)まで