笑顔輝く共生のまちづくり – つどい場「このゆびとまれ」

“笑顔”と“共生のまちづくり”につながる取り組みをレポート

 ごはんを食べたり、ピアノを弾いたり…まるでもう一つの自宅のように立ち寄れる場所が、西宮市の住宅街の一角にあります。

多世代みんなでつくる居心地の良いまち

認知症の方でも安心して暮らせるまちに

 つどい場「このゆびとまれ」は、高齢者・子ども・子育て中の親など多世代の住民が毎回20名ほどつどい、思い思いに過ごすことのできる場所です。
 オープンのきっかけは平成29年、介護職として高齢者施設で働く松本文(まつもとあや)さんが、「認知症の方が施設の外でも安心して暮らせるまちにしたい」と思い、同じ介護職の仲間や地域のサロンなどで出会った方などに声をかけたことからはじまります。市社協のつどい場講座を受講するなど、準備や話し合いを重ね、平成31年4月に松本さんの自宅の一部を開放してオープンしました。

地域の人がつながることで支え合いの取り組みが広がる

 当初は介護職中心のスタッフではじめたこともあり、認知症の方やその家族が多く集まっていましたが、手作りのチラシによる周知や行政・社協からの紹介などで存在が広まるにつれ、小学生や子育て中の親など、世代を問わず誰もが気軽に立ち寄ることのできる場所になりました。
 「私は家の持ち主というだけ。私がいなくても、集まった一人一人ができることをして、安心できる空間をつくってくれている」と松本さん。保育系の資格を持つ住民が、子育てで悩む住民の相談に応じたり、学生が得意の料理をふるまったり。学校の先生から紹介を受けて「このゆびとまれ」に通う不登校の中学生が、地域の方と時間を過ごすうちに、コミュニケーションが増え、次第に学校に行けるようになったことも。また、ある他のつどい場から「子どもが通う就労支援事業所から帰ると、親の仕事が終わるまでの間に利用できる制度や居場所がなく困っている方がいる」との相談があり、「このゆびとまれ」でその時間を過ごすことになった例もあります。それぞれが自分らしく過ごせる居心地の良さがあることで、住民同士のつながりも広がってきました。
 令和4年からは、毎週土曜日のお昼時に参加者で食卓を囲む「母ちゃん食堂」もスタート。何か困りごとがあればいつでも気軽に相談でき、柔軟に対応できる場所であるのがつどい場の魅力です。
 松本さんは、「行政などの相談窓口の多くは、どうしても平日の9時~17時の対応が中心。福祉制度で対応が難しくても、この場所がその穴を埋めるような存在でありたい」と語ります。今後も「このゆびとまれ」で地域の人たちがつながり、支え合える関係性が育まれていくことが期待されます。

代表の松本さんはつどい場をするために転居。
手作りの「このゆびとまれ」の看板がお出迎え
多世代が集い、大家族のように過ごしています

取材を終えて

 現在、他のつどい場と連携して西宮市内のつどい場をまとめた「つどい場カレンダーMAP」も作成しているそうです。毎日、どこかのつどい場がオープンしているということは、地域住民の安心につながることと思います。今後、さらに拡大していくつどい場を拠点にした住民のつながりにも注目です。

○つどい場「このゆびとまれ」

開催日
毎週 月・金(13:30~16:00)、土(12:00~15:00)
参加費
毎週 月・金 200円 、土 大人500円 子ども200円
場 所
西宮市甲子園九番町1-19

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