笑顔輝く共生のまちづくり – 「共生のまちづくり」推進フォーラムの開催報告

“笑顔”と“共生のまちづくり”につながる取り組みをレポート

 今号はページを拡充し、2月17日に神戸市産業振興センターで実施した、「共生のまちづくり」推進フォーラムの開催報告を掲載します。

〝ほっとかへん〟を合言葉にした共生のまちづくり

「共生のまちづくり」推進フォーラムの開催について

 新型コロナウイルス発生から三年が過ぎ、地域には新たな工夫を取り入れた住民の見守り・支え合い活動や「ほっとかへんネット(社会福祉法人連絡協議会)」による制度の狭間にある生活課題への取り組みが進んでいます。
 本会では、誰も取り残さない“つながりで笑顔輝く共生のまちづくり”を考える場として、「共生のまちづくり」推進フォーラムを開催しました。

記念講演 – 「人と人とがつながり、協働するまちづくり」

 前半に登壇した記念講演の講師、studio‐L代表、関西学院大学建築学部教授の山崎亮さんは、コミュニティデザイナーとして全国各地でまちづくりのプロジェクト・総合計画づくりが住民参加で進むよう、地域の課題を地域の人が話し合いを重ねて解決する仕組みづくりのサポートに数多く携わっています。

各地のプロジェクトを紹介しながら、みんなでまちづくりを話し合う「ワークショップ」の面白さと大切さを語る山崎さん

 講演ではその豊富な経験の中から、地域住民とのワークショップの事例として、移転新築する病院内に住民が集える空間(ライブラリーやガーデンなど)を設けて交流を生み、健康に暮らせるコミュニティづくりを応援する病院として地域に根付いた事例が紹介されました。また、市の「高齢者にやさしい都市」構想に向けて、美術館の企画展を住民が考えるというユニークなプロジェクトを進め、年齢差を越えた住民同士のつながりや地域の活力が生まれた例なども紹介されました。
 事例を通じて、住民のワークショップを大切にすることが主体的な活動を生み出すこと、これまでに出会ったことのない人を含むさまざまな人とまちづくりを考える大切さなどが話されました。今後のまちづくりに向けて山崎さんは、「楽しそうだと思えることをテーマに活動し、そこから地域の幸せを考えることが地域共生社会の実現につながるのでは」と提起し、充実した講演を締めくくりました。

パネルディスカッション – 「〝ほっとかへん”を合言葉にした、共生のまちづくり」

 後半のパネルディスカッションには、南あわじ市社会福祉法人連絡協議会(ほっとかへんネット南あわじ)代表の岡本和浩さん、福岡県の大牟田市社協総合生活支援課課長で、社会福祉法人地域公益活動協議会の事務局を担う馬場朋文さん、組合員や地域住民同士の協働による助け合い活動を後方支援するコープこうべ地域活動推進部の足立大さんの三名がパネリストとして登壇され、武庫川女子大学の松端克文教授のコーディネートで実践報告とディスカッションが進みました。

南あわじ市社会福祉法人連絡協議会
(ほっとかへんネット南あわじ)代表
岡本 和浩 さん

 平成26年から市内の社会福祉法人の協働でさまざまな地域公益活動を進めてきました。
 協働する上で重視するのは、誰か一人だけが良いところ取りをしないこと。社協や特定の法人ではなくみんなで活動をすることです。そのためにも、各施設の職員が参加する担当者会や、広報・災害・困窮者・子どもをテーマとした各分科会で具体的な活動を生み出しています。地域の子どもたちのための「ほっとネット食堂」やホームページの開設などに取り組みましたが、その都度100%は求めずにやりがいとスピード感をもって取り組むことが活動を推進するポイントになっていると思います。

大牟田市社会福祉協議会
大牟田市社会福祉法人地域公益活動協議会
馬場 朋文 さん

 平成27年に大牟田市社会福祉法人地域公益活動協議会を設立し、「生活困窮者レスキュー事業」に取り組んでいます。
 各社会福祉法人の常勤職員一人あたり千円の会費を集め、「ゴミ屋敷と呼ばれる家の清掃活動」「生活困窮者への食料・日用品等支援」など、法人のみなさんと協働で実践を進めてきました。協議会の事務局を担う社協としても、レスキュー事業で重ねた実績をもとに、制度の狭間にある課題を行政に示し政策提言にもつなげてきました。次年度に向けては、社会福祉法人以外の関係団体とも協働しながら、地域に必要とされる取り組みを進めていきます。

コープこうべ
地域活動推進部 地域連携推進 統括
足立 大 さん

 コープこうべでは、各地区本部や店舗などを拠点に、つながりづくり・助け合い活動に取り組んでいます。
 全店舗で食品寄付を受けて善意をつなぐ「フードドライブ」、見守りを兼ねた配達を障害者が担う「買い物支援」、西宮市などで進めている「つどい場づくり」などの取り組みが広がっています。これらの活動は全て対話がベースとなっていて、令和3年からは、各地域のさまざまな関係者が集まり暮らしの課題を話し合う「地域つながるミーティング」を始めました。今後、社協や社会福祉施設、NPOなどとさらなる協働のプロジェクトが生み出せるよう、コープも地域の一員として、まちづくりに取り組みたいと思います。

私たちが目指す「共生のまちづくり」に向けて

 松端教授のコーディネートで進んだディスカッションからは、取り組み主体や地域性が異なっても、まちづくりには「協働とその前提になる対話・協議」が不可欠で、その協議には、あらたなつながりや発想を生み出す多様性も大切になることが確認できました。また、進める活動自体のやりがいや楽しさが重要になる点も見逃せないポイントとなりました。
 令和5年度から、県内市区町社協には、制度の狭間にある生活課題を把握し、その解決に向けて地域のコーディネート役を担う「ほっとかへんネットワーカー」が配置されます。今回のフォーラムは、配置される同ワーカーも含めて、地域で活動する全ての人にとっての、誰一人取り残さない・取り残されない「共生のまちづくり」に向けたヒントを得られる場になりました。

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