2023年9-10月号
このコーナーでは、地域福祉のキーパーソンや実践者・当事者らのエピソード・思いを紹介していきます。
シンクグローバル・アクトローカル
定年年齢での退職を機に、ゆとりある暮らしを求めて大阪から丹波にIターン移住しました。ですが、この地で市民活動等との関わりが増えるに連れ、予想外のドタバタの日々に突入。右往左往の活動とそこから見えた地域の可能性について触れたいと思います。
移住して数年、母が認知症歴20年以上だったこともあり、丹波でも、認知症の方が主人公として参加するカフェができないかと考えました。無謀な飛び込み提案から始めましたが、幸いにも丹波市社協さんや南部地域包括支援センターさんの全面支援を得て、平成31年から「注文をまちがえる喫茶店だんない」をスタートさせました。「だんない」とは丹波の方言で「気にしないで、大丈夫」といった意味です。現在、年7~8回の不定期開催ですが毎回50名程の来店客で大賑わい。令和5年7月で第17回目の開催を迎え、地域に根差した居場所になりつつあります。当日の運営支援やチラシ配布、茶菓子の提供など多くの方々のご協力で成り立っており、感謝しきりです。
また、令和2年からは中間支援のNPO法人「丹波ひとまち支援機構」に関わっています。過疎や人口減少、担い手不足等が中山間地の共通課題ですが、これらに真正面から挑んでいる事務局の皆さんの頑張りはすごいですよ。ぜひ、地域自治を励ます多彩なメニューを展開する“丹波”の動きにご注目ください。非常勤のサボリ理事の私は、数ある事業の内、地元企業等の地域貢献を進める「たんばローカルグッドネットワークはまころ」を手伝っています。「はまころ」とは自転車の補助輪のことで「お互いを支え合い、動かしていく」と言う意味の愛称です。現在は参加企業と地域課題の勉強会を続けていますが、皆さん、事業の特色を活かして地域に貢献しようという高い志をお持ちです。「地域を良くしていく仲間」として、地域企業と市民活動の新しい連携が生まれようとしています。
私は現役時代、勤務先の社会貢献部署を担当し「支援者の視点」で市民活動と接してきましたが、今はプレーヤーとして、よりダイレクトな手応えを感じています。この間、多くの人やコトに出会ってきましたが、地域では今、ニーズ発、自分発、または生きづらさ発の多彩な活動が広がりを見せています。ともすれば異質を排除しがちな日本社会ですが、これら多様な価値観を認め合う、しぶとい地域づくり、すなわち「地域の市民自治」を高めることがさまざまな課題を乗り越える原動力になるのだと思います。行政は勿論、専門職や企業、生産者、自治会、市民活動などが資源を持ち寄る「混ぜ込ぜ型」の連携が動き出せば、未来はきっと新しい姿を見せてくれるはずだと思います。
だんないの取り組みは、2022年1・2月号「あなたのまちの社協活動」で紹介しています。
https://hyogo-no-fukushi.t-reader.jp/2022/2022-jan-1/3325/