2023年5-6月号
このコーナーでは、地域福祉のキーパーソンや実践者・当事者らのエピソード・思いを紹介していきます。
中原 美智子(なかはら みちこ)さん
特定非営利活動法人つなげる 代表理事
株式会社ふたごじてんしゃ 代表取締役
愛・自由・自律
長男出産の7年後、双子の次男・三男を出産しました。交互に泣く双子の子育ては、ほとんど眠ることができず過酷でした。 ある日、次男と三男を自転車の前後のシートに乗せて外出し、バランスを崩し転倒したことがありました。その経験から、体重差がない多胎児でも安定して走行できる三輪の「ふたごじてんしゃ」を開発しました。多胎児と安心して移動できる喜びを今困っている人にも届けたいという思いから、株式会社ふたごじてんしゃを設立しました。 私のこだわりは、購入希望者が抱える多胎児の移動の悩みや育児の何に困っているのかを解決できなくても一緒に考えることです。その声を丁寧に聞いていくと、多胎児ならではの育児の大変さや経済的な不安、理解者不足など、社会から孤立している親の姿が見えてきました。 子どもが幼い数年くらい移動の不便を我慢すればいいと言う人もいます。でも、私は不便だなあと感じる人がこれからも続いていく、「不便のバトン」を断ちたいと思いました。 “今”困っている人に寄り添いたいと思う根底には、私自身が幼少期から親からの暴力や暴言で苦しんでいるときに、周りの大人から「今は耐えてくれ」と言われ続け、手を差し伸べられなかった経験からかもしれません。 私自身が苦しんだ「あなたなんて生まれてこなければよかった」という言葉を、追い詰められた親が発することがないような社会を目指したい。多胎児の親に寄り添い、支えたいという思いから、NPO法人つなげるを設立しました。
NPO法人つなげるでは、多胎児の親が気軽に雑談や相談ができるようなLINEのオープンチャットやアバターを使った交流ウェブサイトなど、オンラインでつながる場づくりに力を入れています。SNSや尼崎市で出会った双子のママがピアサポーターやウェブデザイナーとして活動に参加しています。 また、今年2月に尼崎市内に多胎児支援の拠点「ふたごハウス」をオープンしました。多胎児の親同士の情報交換はもちろん、入浴や食事の支援など、親が少しでも休憩できる自宅のようにくつろげる場所を目指しています。 今年度は地域とのつながりを意識し、オンラインでの多胎児支援のソーシャルコーディネーターの育成や、地域の多胎児支援者が、行政などの介入が必要あるか判断するときの助けになるような仕組み作りにも取り組んでいます。 誰もが安心して子育てができるような社会を目指し、1ミリでもいいので前進していきたいです。