2022年5-6月号
このコーナーでは、地域福祉のキーパーソンや実践者・当事者らのエピソード・思いを紹介していきます。
中田 智恵海(なかだ ちえみ)さん
特定非営利活動法人ひょうごセルフヘルプ支援センター 代表
あせらず、やめず、地域に根差してつづけよう!
私の子どもは、500人に1人といわれる口唇口蓋裂※1という障害を持って生まれました。子どもが幼児期の頃、幼稚園や地域で変な顔と言われ始め、親として対応に悩んでいたところ、同じ障害を持つ子の“親の会”に出会いました。情報も限られた時代、先輩のお母さん方が体験で得た知識を学ぶだけではなく、障害をわが子に正しく伝える大切さを学び、障害を隠さなくてもよいのだと前向きになれました。
自分一人ではないと思えた親の会は、私の居場所で救いになりましたが、同時に、このような団体が広く知られ、もっと活動できるように社会の支えが必要だと感じました。
※1 上くちびるや上あごに割れがみられる生まれつきの障害。現在は、適切な時期に正しい治療を受ければほとんど障害は残らないとされますが、家族や周囲の人が障害を正しく理解し治療に協力することが大切とされます。
子どもが幼稚園生になると、セルフヘルプグループの活性化を目指し、大学院で社会福祉を学び始めました。その後、地域福祉においてセルフヘルプ活動を重視する考えの教授が、大阪でセルフヘルプ支援センターの立ち上げ準備を始め、私に声を掛けてくれました。
大阪では平成5年に支援センターが設立され、私も相談員として活動しましたが、兵庫県に住む方からも多くの相談がありました。当時、紹介できたのは府内のグループだけでしたが、地域に根差してセルフヘルプグループが活動できるよう、兵庫県にも支援センターが必要だと考えました。その思いを抱き続け、平成13年に県社協の協力のもと「ひょうごセルフヘルプ支援センター」を立ち上げ、設立セミナーを開催しました。
その後、市町社協の働きかけもあり、支援センターが把握する団体数は設立当初の76団体から現在は297団体に増えています。国の政策などに関わらず、セルフヘルプグループにとって社協の積極的な関わりは欠かせないと考えます。
セルフヘルプグループはお互いが成長しあう場であるとともに、社会を豊かにする存在です。思いを分かち合う場づくりや当事者自らが社会に発信する活動を通じて、セルフヘルプグループの存在と活動を社会に浸透させてきました。みんなが共に生きていくという気持ちが社会に浸透すれば、一人一人が豊かな気持ちで生きていける。セルフヘルプグループとの歩みを振り返りながらそのように思います。
ひょうごセルフヘルプ支援センター