私の物語 – 宇都 幸子(うと さちこ)さん

 このコーナーでは、地域福祉のキーパーソンや実践者・当事者らのエピソード・思いを紹介していきます。

一つの命に寄り添う

宇都 幸子(うと さちこ)さん (神戸市)
阪神高齢者・障害者支援ネットワーク

Personal History

平成8年
阪神高齢者・障害者支援ネットワーク入職 ※平成16年NPO法人設立、平成27年解散
平成27年
任意団体として再出発し、同団体代表就任
平成28年
兵庫県功労者表彰(防災功労)
令和 3年
兵庫県社会賞受賞

私のモットー

人との出会いやつながりを大切にして明日を生きる!

「被災地のマザーテレサ」との出会い

 阪神・淡路大震災の翌年(平成8年)、東京から宝塚市に移住しました。新しい生活に慣れ始めた頃、従前から地域づくり活動をしていたこともあり、被災地支援に関心のあった私は、被害の大きかった神戸市長田区に赴きました。そして、その時点でも瓦礫の山が多く残り、復興が進まない街の姿に言葉を失い、同時に被災者の生活に不安を覚えたのです。
 程なくして、何か役に立てないかと支援団体の紹介で西区の仮設住宅を訪問し、「被災地のマザーテレサ」と称された看護師の故黒田裕子さんと出会いました。被災者支援について話していると、私のボランティア活動などの経験を知ったからでしょう、黒田さんは突然私の目を見て「震災で助かった命が失われることは許されないの。被災者の見守り活動を手伝って」と懇願されました。急なことで驚きましたが、私は「わかりました」と即答していました。

被災者一人一人の命に寄り添う

 活動を始めてしばらくは、被災者への寄り添い方に悩む日々を過ごしていました。しかし、「その人の暮らしを感じてこそ、とるべき行動が見えてくる」など、黒田さんから多くの助言をもらいながら活動を続け、被災者の自立支援の思考を深めることができました。
 西区の仮設住宅が解消され、平成年に黒田さんが亡くなられた後も、復興住宅に転居した被災者を中心に見守り活動を行ってきました。生活での困りごとや悩みごとを丁寧に聞きながら、一人一人の命が大切にされる誰もが住み良い地域をつくることを目標に今に至っています。

活動経験を次世代へ

 現在、力を入れているのは、自身の活動経験を次世代に語り継ぐ取り組みです。依頼があれば現地・オンラインを問わず「一つの命に寄り添い、とるべき行動を考えることの大切さ」を伝えています。命に寄り添うことに対し、支援者は責任の重さを感じなければならないと強く思います。これからも今までの活動で培ってきた理念や使命を、次世代を担う若者に引き継いでいくとともに、人との出会いやつながりを大切にした活動を続けていきます。

専門職を招いて、認知症について共に学び合う場も企画しました
昨年のクリスマス会の様子。コロナ禍でも、集える 場づくりを進めています

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