2022年7-8月号
このコーナーでは、地域福祉のキーパーソンや実践者・当事者らのエピソード・思いを紹介していきます。
稲葉 夏輝(いなば なつき)さん
社会福祉法人福住山ゆりの里
介護老人福祉施設やまゆりの里 主任生活相談員
長所で勝負
私が10歳の頃、知的障害のある大叔母が亡くなった際、「障害のため思うような人生を送れなかったのでは」というお坊さんの言葉が、福祉に関心を持つきっかけとなりました。中学校の職業体験で介護職に魅力を感じ、定時制高校に入学してからは、昼は幼稚園で働き、夜は介護の勉強に励みました。
私の介護観が定まることになった経験が、父方の祖母を自宅で看取ったことです。祖母は胃がんの末期で吐血して倒れ入院中でしたが、本人の意思を尊重して自宅に戻ることを決断。私が勤務していた小規模デイサービスも利用しつつ、慣れた環境に安心した祖母の体調は奇跡的に回復しました。やがて祖母は穏やかに旅立ちましたが、本人の望みを叶える大切さを学び、私の福祉マインドを変える大きな転機になりました。
この後、「祖母のような最期を大きな施設でも実現したい」と転職しましたが、看取りに向けて提案した研修への協力を得られず、力不足で実現できずにいました。そんな時、やまゆりの里から声を掛けてもらい、志を叶えようと転職して今に至ります。
やまゆりの里では、施設の協力も得て、今では月3回の研修を実施。看取りも視野に、利用者が望む生活を叶える介護技術と福祉マインドを職員間で楽しく学び合っています。研修で職員の意識も変わり、主体的に仕事に取り組む姿から手ごたえを感じています。
私が実感してきた介護の魅力ややりがい、感動を広く伝えたいと考え、平成30年に施設のインスタグラムを始めました。ここでは「当たり前の日常」を毎日投稿し、利用者の人生エピソードや職員の思いを交えて発信するのがこだわりです。フォロワーは1万1千人を超えましたが、情報発信の取り組みは相乗効果を生み、施設ではBBQや居酒屋、映画館など楽しめる企画づくりも盛んです。
介護に対するイメージはさまざまで、人材確保が難しい面もありますが、利用者との関わりで得られる学びや楽しさが何よりの魅力です。その魅力を発信し続け、一人でも多くの人が介護にプラスのイメージを持てるよう取り組むことが今の目標です。
「やまゆりの里があるから安心」と地域住民から一目置かれる施設を目指して、今後も限界を決めつけず挑戦していきたいです。
利用者の笑顔や職員の思いを毎日発信
Instagramアカウント
@yamayurinosato