2023年9-10月号
“笑顔”と“共生のまちづくり”につながる取り組みをレポート
介護と仕事の両立ができる社会を目指し活動するNPO法人アイリス。団体名の“アイリス”とは、ギリシャ神話の虹の女神“天と地のメッセンジャー”であり、またアヤメ科の花の名前でもあります。その花言葉である「良い知らせ」を届けたいという思いが込められています。
家族を介護する方の身体的・精神的な負担は計り知れなく、やむを得ず介護離職をしてしまう人は年間約10万人にのぼります。介護のために今後の人生を変えざるを得ないということがないよう、介護者の想いに寄り添い、助け合える地域社会、企業の風土づくりを目指すのが、特定非営利活動法人アイリスです。
代表の合田真弓さんが認知症の母を介護した際に、周囲に介護のために離職する人が多くいる中、仕事を継続しながら母親を看取りました。介護を終えたときに「仕事を続けてよかった」と思ったことがアイリスを設立するきっかけとなりました。
働きながら介護をする人は孤立しがちで情報が得にくい状況です。このため、一番人の集まりやすい日曜日に「ケアラーズカフェアイリスのRIBBONcafe」を月1回開催しています。同じ境遇にある人同士が、情報交換をしたり、介護に対する思いや苦労を共有したりすることで、精神的な負担を減らす交流の場となっています。
また、令和4年1月には「訪問介護事業所ヘルパーステーションりぼん」を開設しました。やむを得ず介護離職をした人や介護中の人が働きやすいように、短時間勤務を可能にするなど工夫がなされています。
他にも、伊丹市と協働してオリジナルのエンディングカード「想いを伝えるなないろカード」を作りました。従来のエンディングノートとは異なり、はがしたり書き直したりできる付箋を張り付けるカードなので、気軽に作れる仕組みがポイントです。自分自身が介護を必要とする場合に、どのような支援を受けたいかなど、介護について具体的に考え、意識を高めるきっかけにもなります。カードを書くことが難しい人には「カードの書き方講座」も開催。行政と連携して市民や企業にも案内しています。
今後は、活動の場を伊丹市以外にも広げたいと考え、SNSでの情報発信や講演の開催、広報にも力を入れています。アイリスでは、今後も介護に対する社会の意識を高めることで、介護者が「助けて」と言い出せる風土づくり、介護と仕事が両立できる風土づくりをすすめていきます。
アイリスの活動を通じて、地域で集まり交流することの大切さを実感し、「将来は、介護者だけでなく子どもや障害などの区分なく、誰もが気軽に集まれる場を作りたい」と合田さんは嬉しそうに話されました。介護者に寄り添いながら、活動を広げていくアイリスに今後も注目です。
『特定非営利活動法人 アイリス』