笑顔輝く共生のまちづくり – 長谷地区の振興を考える会「Hase Fun」

“笑顔”と“共生のまちづくり”につながる実践をレポート

 兵庫県の真ん中に位置する神河町の山奥、ススキの名所、砥峰(とのみね)高原の麓にある人口690人・高齢化率48.9%の長谷(はせ)地区。10~70世帯からなる9つの集落が力を合わせて株式会社を設立し、スーパーマーケットやガソリンスタンドを運営しています。
※神河町全域の高齢化率は37.9%

自分たちでつくり、守る集落の暮らし

みんなが集まるマーケット

 買い物帰りの人や農作業をする人がお茶を飲んでおしゃべりを楽しんだり、小学生が宿題をしたり。住民が思い思いに過ごせる場所がスーパーの一角にあります。
 住民自身の手で運営する、このスーパー「ふれあいマーケット」は、食料品や日用品の買い物だけをするところではありません。週に2日運行するマーケットの送迎車は、運転手が診療所への送迎も行いながら地区の様子を見守る大切な機会です。また、駐車場はJAの移動金融店舗車や町内各地へのコミュニティバスの停留所にもなっていて、暮らしを支える機能が集まっています。
 住民自身が運営するからこそ、必要なものを話し合って生み出し、観光客や地区外の人との交流、さらには見守りあいの拠点ともなるなど、マーケットは地区に欠かせない存在になっています。

ふれあいマーケットで開催する「ふれあい喫茶」は、地域の人が交流できる場所です

自分のために・地区のために

 ふれあいマーケットの前身のスーパーは、平成19年まではJAが運営していましたが、ガソリンスタンド事業と合わせて撤退の話があがりました。地区唯一の買い物先と、移動手段である車の燃料の確保をと、各集落からメンバーを選出した「長谷地区の振興を考える会」(以下、「考える会」)で話し合い、全戸出資で株式会社長谷を立ち上げ、町やJAの協力も得て事業を引き継ぎました。
 マーケットの運営の安定が、会社の安定、ひいては住民の暮らしを守ることにつながります。そこで、9つの集落が順番に開催する「ふれあい喫茶」や四季折々のイベントをふれあいマーケットで行い、イベントとの連動で人が集まり、地区に収益をもたらす仕掛けづくりも行っています。ふれあい喫茶には多い時は150もの人が参加しました。
 「自分たちの生活は自分たちで守らないといけない。今後も高齢者が出かけられる場をつくり、見守りあって暮らしたい」と、考える会会長で会社の代表も務める立垣昇(たてがきのぼる)さんは語ります。イベント部会や農産部会などに分かれて活動を行い、地区の気になることを毎月話し合う考える会。これからも地区とそこでの生活を守りたいという思いを原動力に、住民の話し合いと努力が続きます。

コロナ禍を乗り越えて、久しぶりに実施したイベントの一つ「ほたる祭り」。イベントは地域を元気にします

取材を終えて

 JRのダイヤ改正で、地元の長谷駅への停車が減る危機があった際、住民で駅の利用を増やし、必要性をアピールして回避をしたそうです。今でも毎月13日の記念日に、みんなで電車に乗るイベントを実施するなど、ここにも地区の結束力と地域愛を感じました。

長谷地区の振興を考える会「Hase Fun」

HP
https://hase.fun/

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