【特集】令和5年度兵庫県社協の取り組み

地域に交流と活力を生み出す、高校生のボランティア活動
(高砂市)
社会福祉法人と地域の協働で生活に困窮する人への支援に取り組む
「ほっとかへんネット」(播磨町)
地域共生社会を見据えて、地域での権利擁護体制づくりを考えたフォーラム
福祉関連施策の充実に向けた、県知事への政策提言活動

 “つながりで笑顔輝く共生のまちづくり”を基本目標にした、兵庫県社協の中期計画「2025年計画」は、今年度、折り返しの時期を迎えます。
 国では、人口減少や少子高齢化、コロナ禍で深刻化した社会的孤立の課題などを背景に、こども家庭庁の創設や総合的な孤独・孤立対策の強化などに取り組み、県の「地域福祉支援計画」も改訂に向けた検討がされます。
 この特集では、国の政策動向なども踏まえながら、共生のまちづくりに向けて県社協が取り組む令和5年度の事業概要をお伝えします。

社会福祉を取り巻く国の政策動向

◆総合的な孤独・孤立対策の推進とこども家庭庁の発足

 長期に及んだコロナ禍は生活困窮や社会的孤立の課題を浮き彫りにしました。これを踏まえ、令和3年に国の重要施策を調整する内閣官房に孤独・孤立対策担当室が設けられました。現在、「孤独・孤立対策に関する有識者会議」では、社会的孤立への対策を総合的に推進する法整備も視野に議論が進んでいます。
 また、子育て世帯の孤立や貧困、児童虐待など、地域では子どもたちをめぐる深刻な課題が生じていることから、この4月にこども家庭庁が発足しました。
 “こどもまんなか社会”の実現を合い言葉にした同庁の発足に伴い、子どもの意見を政策に反映させる仕組みづくりも始まろうとしています。子どもたちの成長を社会全体で応援できるよう、民生委員・児童委員や児童福祉の関係者も含めた私たち一人一人が、自身の地域で取り組まれる関連施策に関心をもつことが求められます。

◆地域共生社会の実現に向けた厚生労働省の新年度予算

 厚労省の新年度予算では、昨年度に続き住み慣れた地域でつながり合い・支え合う「地域共生社会」の実現を念頭にした各種の政策が打ち出されています。
 地域づくりを基盤に包括的な相談支援体制づくりを目指す重層的支援体制整備事業や、生活困窮者やひきこもりへの支援、権利擁護支援体制の強化など、地域福祉に関連する事業は拡充も伴って引き続き実施されます。
 さらに昨今の情勢を踏まえた新規事業として、自殺総合対策大綱を踏まえたゲートキーパー養成・支援事業、昨年成立した「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」を踏まえたDV被害などを受けた女性への支援体制の整備なども進められます。
 ここに記した各種の施策は、いずれも“誰一人取り残さない”というSDGsの理念と重なり、社会的孤立への対応という側面も併せ持ちます。そして今後、各地域での議論と創意工夫が加わってこそ初めて実効性のある取り組みになるものと言えます。

令和5年度の県社協の重点的な取り組み

◆共生のまちづくりに向けた県社協の組織改編

 県社協ではこの4月、確実で効率的な事業推進を通じて県社協に期待される役割を果たせるよう、組織改編を行いました【図表1】。

【図表1】県社協 令和5年度組織体制

 今年度が折り返しの年となる県社協の中期計画「2025年計画」と、多岐にわたる事業の分掌事項を踏まえ、従来の「福祉事業部」「福祉支援部」の業務を、「福祉事業部」「福祉人材センター」「福祉資金部」「権利擁護センター」に移行・再編するなどの見直しを行ったところです。
 新たな体制のもと、県社協では地域の福祉ニーズや国の政策動向なども見据えて、以下3つの重点的な取り組みに整理して今年度の事業を計画しています。

①ウィズコロナによる全県的な「共生のまちづくり」の推進        

 コロナ禍で浮き彫りとなった社会的孤立や生活困窮などの課題の解決に向け、今年度も各市町域で「包括的な支援体制の整備」が求められます。県社協ではこれを踏まえて、支援体制の構築に地域福祉の視点で取り組む人材育成の検討を始めるとともに、市町・市町社協・県・県社協の4者の協議で重層的支援体制整備事業に取り組むモデル事業を新たに実施します。
 包括的な支援体制の整備に必要なのは、まずは分野にとらわれず相談を受け止めることです。そのためにも分野を横ぐしでつなぎ、相談窓口の職員をバックアップする体制を整えることが必要です。そして相談者と伴走的につながり続け、暮らしている地域で居場所や役割を持てるような支援を探ることが重要になります。
 この居場所やあらゆる人が役割を発揮できる場づくりは、「共生のまちづくり」の推進に向けた大切なポイントですが、専門職の力だけではなく、地域住民との協働があって初めて実現できるものです。
 これまでも各地では、住民が主体となった見守りや支え合い活動、サロンや子ども食堂などの集いの場づくりなどに取り組んできました。これらはコロナ禍で休止・廃止の危機に直面しましたが、ウィズコロナを見据えた今、改めて住民主体による地域福祉活動をどのように支えるのか、協働の可能性をどのように広げるかを考えることも求められています。県社協はこの視点をもって、生活支援コーディネーターの育成や社協ワーカー実践研究会議に取り組み、全県的な地域福祉の推進を図ります。
 また、社会福祉法人が共生のまちづくりの実現に大きな役割を果たすという認識のもと、引き続き各市区町域での社会福祉法人連絡協議会(ほっとかへんネット)の活性化に取り組みます。今年度は、制度の狭間で孤立・困窮する人を柔軟に支える仕組みづくりや、DWATなど災害に備えて活動する社会福祉法人を、「ほっとかナイト」として認証する仕組みを新たに始めます。

②困りごとを受け止め、支える全県的な相談支援の仕組みづくり  

 コロナ禍で経済的な影響を受けた世帯の暮らしを支えたるため、県社協では20万件・800億円を超える生活福祉資金特例貸付を実施しました。
 償還とそれに付随する相談支援の対応は今年1月から本格化しましたが、今年度は社協における生活困窮者支援体制強化事業を実施し、市区町社協に「ほっとかへんネットワーカー」を新たに配置します。
 各地に配置されるほっとかへんネットワーカーには、関係者と連携し、特例貸付を含む生活福祉資金など社協の相談支援の取り組みを通じて、地域課題や必要な社会資源を整理する役割が期待されます。その上で地域のコーディネート役として、行政や社会福祉法人、民生委員・児童委員、NPOなどと協働して、市区町域で相談・生活支援体制の整備を進める役割も期待されます。
 ほっとかへんネットワーカーの配置という新たな取り組みに加え、生活福祉資金を通じた生活困窮者への相談支援体制の強化に向けて、相談スキルアップ研修会や生活福祉資金基礎研修会などを新規で実施します。この他、若年性認知症については、当事者により身近な県内8圏域で支援体制づくりが進むよう、支援ネットワーク強化事業にも取り組むなど、生きづらさや困りごとを受け止め、支える相談体制づくりを全県的に進めます。

寄付された食料セットを手渡しながら、
暮らしの困りごとを聞き取った訪問調査(相生市)

③福祉・介護人材の確保・育成・定着に向けた取組みの強化

 福祉人材の確保・育成・定着をめぐっては、働き方改革や定年延長、ICTの導入などの動向を見据えた対応が必要になります。
 県社協では人材確保に向けて、ICTを活用したオンライン就職説明会を対象地域を拡充して実施したり、都市部から地方部での職場体験学習に参加する学生に、交通費・宿泊費などの一部を補助する取り組みを新たに実施します。
 福祉人材の育成・定着に関しては、研修ニーズを把握しながら、特に中堅層や管理職層に向けた専門研修の充実を図るとともに、法人・施設で実施する職場研修の支援に向けた取り組みを進めます。
 また、来日した技能実習生を支える監理団体の活動に加え、特定技能外国人の登録支援機関としての業務を引き続き実施します。

 ここまでに触れた他にも、県社協「2025年計画」の7つのアクションプランに基づく重要な事業があります。主な新規・拡充事業を【図表2】に掲載していますが、事業計画全文は本会のホームページにも掲載していますので、ぜひご覧ください。

【図表2】 県社協「2025年計画」と県社協の令和5年度の取り組み

事業計画の全文はこちら
https://www.hyogowel.or.jp/dl/R5keikaku.pdf

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