笑顔輝く共生のまちづくり – 一般社団法人ケアと暮らしの編集社 だいかい文庫

“笑顔”と“共生のまちづくり”につながる、さまざまな団体の実践をレポート

 ケアと暮らしの編集社は、“病院・施設の中だけでは解決できない課題”に気づいた医療関係者が豊岡市で立ち上げた一般社団法人です。今回は、その取り組みの一つ「だいかい文庫」の活動を紹介します。

“ケアするまちをデザインする”そんな理想を追い求めて。

医療従事者の街角での活動が元になって

 医師や看護師などの医療関係者たちが、屋台を引いて豊岡の市街地を歩き、出会った人にコーヒーをふるまいつつ健康相談に応じる。そんな「YATAI CAFÉ(やたいカフェ)」という活動から発展し、「誰もが気軽に集える常設の空間を」という思いでつくられたのが「だいかい文庫」です。
 豊岡駅から大開(だいかい)通りを歩いて10分ほど、木とコーヒーの香り漂うだいかい文庫は、クラウドファンディング※1で資金を募り、法人格の取得を経て昨年12月にオープンしました。

※1 インターネット上で広く資金提供を呼びかけ、サービスや商品の趣旨・個人の思いに賛同した人から資金を集める方法

だいかい文庫の前身といえる「YATAI CAFÉ」。
平成28年より概ね月1回のペースで街に出ていました

「本」からケアへとつながる空間をつくりたい

 だいかい文庫は、その名のとおり地元の医師や教員などさまざまな職種の本好きが薦める本が並び、その場で読むことはもちろん、貸出や購入もできるまちの小さな図書館です。普段は病院や施設に勤める医療・福祉専門職などがスタッフとして常駐し、飲み物を提供するカフェともいえます。
 体調を崩してひきこもりがちだったある女性は、この場で出会う人たちとのつながりや会話で少しずつ笑顔を取り戻し、今ではスタッフの一員です。本をテーマに地域の誰をも受け入れるこの空間では、専門職でもあるスタッフとの何気ないおしゃべりに加え、健康のことも含めて気軽に悩みが打ち明けられる場になっています。

空き店舗を改装してつくった「ホッとできる」空間。この日は、作業療法士のスタッフと話すお客さんの姿が

「暮らしていたら、自然と健康になっていた」を目指して

 法人の代表理事で医師の守本陽一さんは、「本を読みに、コーヒーを飲みに来るだけでもいい。大変なときでも公的な窓口に行きづらい人もいるはず。いざというとき、“ここに行けばなんとかなる”と思われる場にしたい」と話します。
 だいかい文庫は今後も新しい「ケアとまちづくり」の形として、みんなで笑顔あふれる場を育んでいきます。

取材を終えて

 普段の暮らしの中にある居場所、つながり、会話こそが、笑顔と元気の源になると感じました。これは、場所を問わず“まちづくり”を考える際の大事な視点になるように思います。

一般社団法人ケアと暮らしの編集社 だいかい文庫

所在地
豊岡市中央町6-1
ホームページ
https://carekura.com/daikaibunko

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