2021年5-6月号
このコーナーでは、地域福祉のキーパーソンや実践者・当事者らのエピソード・思いを紹介していきます。
津久井 進(つくい すすむ)さん(西宮市)
人間の復興
司法修習生時代に阪神・淡路大震災が発生し、少しでも被災者の話し相手になれたらと、ボランティアで避難所を回りました。その際、法が被災者を救うこともあれば、法制度の不備で救えない人もいることを実感しました。この経験が、被災地・被災者への支援を私のライフワークとした原点で、弁護士としての初仕事も被災者の法律相談でした。そこで感じたのは、非常時ゆえに大きな困難に直面するのではなく、平時からあった課題が災害で露呈するということです。弱い立場や不安定な関係性の中で暮らしている人に、災害はより深刻な影響を与えることを改めて感じました。
災害に強い社会の基盤は、一人一人がつながり支え合う、豊かな人間関係だと考えています。そのため私は、弁護士の活動以外にも、子ども食堂や子どもの学びの場づくりなど、多くの市民活動に携わってきました。頼まれたら断らない性格ゆえに巻き込まれてばかりですが、結果としていろいろな人とチームで活動する今につながっています。
被災者が直面する課題はさまざまです。法律だけで解決できない課題も、分野を超えてみんなで協働し、役割を果たすことで解決の糸口が見えてくるのではないでしょうか。
コロナ禍は災害です。災害救助法を適用すれば、困っている人を素早く手厚く救えると私は訴えてきました。コロナ禍以前、災害弔慰金の支給対象の不備を指摘して法改正につなげた経験もあります。長く続くコロナ禍は、感染への不安、経済的困窮、社会の分断など私たちの暮らしに大きなダメージを与え、人々の幸せや何げない日常も危機に瀕しています。これまで各地で災害が起こるたびに培った仕組みやノウハウを、今こそコロナの影響を受けた人たちの暮らしを守るために生かしたいです。
災害は、人にとって当たり前の基本的人権をも脅かします。例えば、冬の避難所で被災者が冷たいおにぎりを食べて我慢している光景。これがあるべき社会の姿でしょうか。被災者の苦しみを代弁し、一人一人の被災者に寄り添う伴走者の輪を広げ、人権の回復を目指したいです。
兵庫県に避難された東日本大震災の被災者の暮らしと活動をサポート
(避難サポートひょうご・避難者交流会にて)
執筆活動を通じて、被災者支援への思いや考えなどを発信
実施期間:6月30日まで
※土・日・祝日は実施しません
相談時間:18時〜20時
TEL:078‐341‐9600
※通話料は相談者負担