私の物語 – 宰井 琢騰 さん

 このコーナーでは、地域福祉のキーパーソンや実践者・当事者らのエピソード・思いを紹介していきます。

“アップサイクル”で想いをつなげていく

宰井 琢騰 (さい たくま)さん
NPO法人 Goodstock

Personal History

平成20年
インテリアメーカーに就職
平成28年
神戸に帰郷、ローカル文化に興味を持つ
平成30年
NPO法人Goodstockに就職。同法人が運営する「たつの市空き家センター」で相談・調査に従事
令和2年
たつの市に移住

私のモットー

やればわかる!
やってみないと一生わからん!!!

空き家問題との出会い

 大学卒業後は茨城県で働いていましたが、実家の中華料理屋を父が閉めることを機に、そばに居たいと神戸に戻りました。
 実家に帰ると祖父が撮影した写真が大量に見つかりました。そこに写る、昭和30年代の神戸・三宮の活気ある街と人々の姿に魅了され、古くから残る文化と街並みに興味が湧きました。
 父の店舗の活用を考えて参加した、空き家を活用した地域づくりに関するワークショップで、県立大学の安枝英俊(やすえだ ひでとし)先生に出会いました。ローカルな文化やまちづくりに興味を持ち始めた頃、先生に声を掛けて頂き、たつの市で空き家センターを立ち上げたばかりのNPO法人Goodstockに就職。以来、フリーカメラマンも兼業しつつ空き家問題の相談・調査をメインに活動しています。

アップサイクルでポジティブな思考に

 景観や防犯などの面で空き家の増加が社会問題になっていますが、その背景の一つに「家財の片づけ」の負担があります。相談を受けた際、まずは家の中の家財を身軽にしてから空き家の再活用や売却を検討する流れで助言をします。
 ただし、親や祖父母が大事にしていた家財を捨てることに迷いが無いとも限りません。そこで大切になるのは、単に捨てるのではなく転用可能な資源として“アップサイクル※1”する発想です。
 例えば、古いタンスもおしゃれな椅子に作り変えられる可能性を知ってもらえれば、気持ちも前向きになり空き家の再活用を考えるようになります。また、祖父母が大切にしていた家財が姿を変え、孫に受け継がれるという家族の物語も生まれます。
 アップサイクルには、空き家の有効活用につながる可能性と、物に込められた想いを後世につなぐ魅力に満ちています。

空き家問題をみんなで考える地域へ

 昨年、地元の家具職人や住民、大学生と連携して、解体家屋の廃材から12台のベンチを製作しました。龍野の旧城下町に置いたところ、住民や観光客がベンチで思い思いに過ごして交流する光景も増えました。また、空き家を活用して開いたフリーマーケットでは、いきいき百歳体操に通うおばあちゃんたちが店番として大活躍され、笑顔と温かな交流も生まれました。
 人と人のつながりは希薄になりがちですが、私が取り組むアップサイクル事業や空き家の活用は、世代を超えた地域の交流につながっています。活動歴は浅いですが、今後は、子どもから高齢者までがアップサイクルやリペア(修理する)文化に触れ合える拠点を立ち上げ、空き家問題を“自分事”として考える機会を増やしていきたいです。

※1 アップサイクル:本来であれば捨てられるはずの物に、デザインやアイデアなどの新たな付加価値を持たせ、別の新しい製品に生まれ変わらせること

アップサイクル活動を行う仲間たちと

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