2023年3-4月号
このコーナーでは、地域福祉のキーパーソンや実践者・当事者らのエピソード・思いを紹介していきます。
平林 景(ひらばやし けい)さん (尼崎市) 株式会社とっとリンク 代表取締役 一般社団法人日本障がい者ファッション協会(JPFA) 代表理事
迷ったときは、ワクワクする方へ!
教員をしていた頃、身近な人が発達障害であることがわかり、全国の施設を回りました。どこも暗く、社会から蓋をされた空間のように感じました。そこで、「通いたい」という気持ちになるような、むしろ通うことに優越感さえ抱くような、他にはない場所を自分の手でつくろうと決意しました。 美容師の経験でおしゃれが持つ力を知っていたので、“おしゃれな放課後デイサービス”をという発想になったのだと思います。視覚から受ける影響は非常に大きく、その感覚的な力は、時に価値観・既成概念を覆します。このファッションの面白さを福祉と組み合わせ、業界のイメージを刷新したいと考えています。昨年のパリコレ進出もその延長線上に過ぎません。
自分一人でできることは限られるので、人を周りに集めるようにしています。ただ、「やってあげる」という関係性ではなく、共感して集まった仲間がそれぞれの強みを発揮して活躍する、フラットなチームです。凸凹があるのは当たり前なので、ミスは責めません。これは放課後等デイサービス「みらい教室」の運営にも通じますが、自分にできること・できないことを知ることが大切です。できないことは背伸びしなくとも誰かに頼ればいい。スキルの有無より、一緒にワクワクできる仲間を見つけることが圧倒的に大事です。 また、現代はSNSを通じて発信したり、つながったりと、何者でもない人が世の中を動かせる時代です。最近は、福祉関係の経営者のインフルエンサーを増やしたいと思っています。たくさんの声が波及すれば、一人一人にとっての「当たり前」が変わるはず。福祉業界を変えるために、発信力を持った経営者、共感し合う仲間を増やしたいです。
社会には、性、人種、障害など多くの“ボーダー”が存在しますが、それをいかに壊せるかを考えています。違いを受け入れられずとも、反発はしなくていいはずです。まずは「そういうこともあるんだ」と受け止め、納得できれば受け入れたらいい。“ボーダーレス”とはそういうことだと思います。 その実現には“今”を変えないといけません。目の前の課題からさえも目をそらす、“ダサい大人”にはなりたくない。身近なところでできることから始めればいいと思います。「福祉も色々できる」ということを、先駆者として若い世代に示していきたいですね。