【特集】つながりで笑顔輝く 共生のまちづくり ~兵庫県社協2025年計画の策定~

 「社会的孤立」「貧困・格差の拡大」など、地域生活課題が複雑化・多様化する中、新型コロナウイルスの感染拡大は地域や住民間のつながりなどに大きな影響をもたらしました。
 これらに対応するため、県社協では「地域共生社会の実現」を目指し、県域での地域福祉を進める力を結集しながら、重点的に取り組む事項を明らかにする「兵庫県社協2025年計画」を策定しました。
 本特集では、計画の概要と今後5年間の県社協の取り組みの方向性をお伝えします。

障害当事者が参加する集いの場
(協働推進目標①)
身近な地域での福祉拠点づくり
(協働推進目標②)
コロナ禍で再開されたサロン活動
(協働推進目標③)
その人らしい暮らしを支えるケア
(協働推進目標④)

2025 年計画のねらいと策定にあたっての視点

「 2025年計画」策定のねらい

  1. 「地域共生社会」の実現に向けて、県社協会員間の連携・協働を一層強めるとともに、幅広い団体・個人に地域福祉とまちづくりの一体的な推進をはたらきかける
  2. 新たな政策動向やコロナ禍で深刻化する社会的孤立等の地域生活課題をふまえ、県社協の重点的な取り組みと事業の方向性を明らかにする

 県社協ではこれまで、情勢動向を踏まえた中長期的な視点から自らの役割と活動方針を「中期計画」として定め事業に取り組んできました。このたび、5年に及ぶ前計画の終了に伴い、県社協では後継の「2025年計画」(以下、「本計画」)を策定しました。
 本計画は、県社協事務局職員のワーキング会議での検討作業とともに、市町社協、社会福祉施設、当事者団体、職能団体と学識経験者からなる策定委員会を中心に、総合企画部会でも多角的に検討され、理事会・評議員会を経て策定されたものです。
 策定過程では、地域共生社会の実現に向けて、委員・職員間で次の3つの視点を意識して検討を進めました。

  1. コロナ禍で拡大した「社会的孤立」への対応
  2. 住民・当事者を中心に据えた、多様な主体の協働による地域共生社会の実現
  3. 地域づくりで進める制度・施策の狭間の課題への対応

 また、第4期兵庫県地域福祉支援計画やSDGsの理念も踏まえ、全県的な地域福祉の向上を目指すこととしています。
 本計画は、今後5年間の「基本目標」、県内のさまざまな団体や関係機関、専門職などと共に目指す「協働推進目標」、県社協が重点的に取り組む「アクションプラン」で主に構成されます。以下、概要を紹介します。

地域共生社会の実現に向けた基本目標

県社協2025年計画基本目標

つながりで笑顔輝く 共生のまちづくり

 兵庫県には個性豊かな各地域に多様な人々が暮らしています。多様性を有する私たちが先の3つの視点でもある「社会的孤立の克服」「住民・当事者を中心に据えた上での協働の促進」「制度の狭間への挑戦」などに取り組むには、「共生のまちづくり」に向けてさまざまな主体が“つながり合うこと”が不可欠です。
 これを踏まえ、本計画で掲げる基本目標には、さまざまな人が抱える生きづらさ、コロナ禍などで先行きに不安がある中でも、つながり合って困難を乗り越え、誰もが笑顔になれる地域社会を創造しようというポジティブなメッセージが込められています。

◆ 分野を超え、広い視野で進める共生のまちづくり

 本計画で取り組む「共生のまちづくり」は、住民相互の見守りや支え合いを基盤に、支え手・受け手の関係を超え、人と人、人と資源が世代や分野を超えてつながり、誰もが安心して暮らせる地域を目指す取り組みを指します。

【共生のまちづくりの一例】

  • 障害者やひきこもりの人が、就労支援を活用して休閑地で農業に携わる
  • 子ども食堂や学習支援で、子どもたちとボランティアの世代を超えた交流、地元企業などの協力が生まれる
  • 社会福祉法人が地域のコミュニティカフェの運営に参加しながら、専門的支援を行う など

 これらのように共生のまちづくりには、福祉分野の連携に限らず、「雇用」「教育」「防災」「まちおこし」など、さまざまな分野の実践と連携し、多様な力を結集することがこれまで以上に重要になります。

学生ボランティアの柔軟な発想・行動も「共生のまちづくり」の大きな推進力

“オールひょうご”で共に進める4つの全県的な協働推進目標

 さまざまな分野の関係者、多様な主体との連携が欠かせない「共生のまちづくり」を進めるために、本計画では4つの全県的な協働推進目標【表1】を掲げました。
 協働推進目標は、県内社協、社会福祉法人、民生委員・児童委員、当事者団体、職能団体、ボランティアなど、県社協の会員に取り組みをはたらきかけ、共に推進する「行動目標」です。これら4つの目標は、ゼロから新しい何かに取り組むことを指すのではありません。普段から取り組む事業や活動、かつて行っていたことの中に、この協働推進目標と重なるものはないでしょうか。何か1つでもあれば、その取り組みは既に「共生のまちづくり」といえるでしょう。
 その活動・事業を大切にしながら、目的やこれまでの成果を再評価し、「誰かと一緒に取り組めないか」「何か工夫を加えられないか」「強みを地域に還元できないか」など、今後に向けた思いを社協や社会福祉法人などに相談することが協働の第一歩となります。
 これら4つの協働推進目標を見据え、県内のあらゆる主体ができる取り組みを進めることで、コロナ禍で顕在化した地域課題の解決、住民間のつながりづくり、新しい支え合い活動の芽生えなどが県内各地で進むことが期待されます。

アクションプランで今後5年間の県社協の取り組みを明確化

 協働推進目標に続き、地域共生社会の実現に向けて、県社協が今後5年間で何に取り組むかを明らかにしたのが「アクションプラン」です【表2】。
 アクションプランには、住民主体の地域づくりを基盤とした包括的な支援体制・共生のまちづくりを、市町社協、社会福祉施設、NPO などと協働して進められるよう7つのテーマ別で取り組みを整理しています。重点的取り組みを中心に到達状況の確認と評価を行い、毎年の事業計画に反映して具体的な事業を展開していきます。

 なお、今後5年間の取り組みを進める上では、コロナ禍で生じた社会的孤立や生活困窮などの課題に対応することが不可欠です。そこで県社協は、アクションプランで地域のつながりづくりに向けた「コロナ禍の地域福祉活動の事例収集・発信、情報交換」、コロナ禍に対応した人材育成の手法を探る「ICTを活用した研修手法の検討・開発」、福祉分野のマッチングを促す「オンライン面談システムの普及」などを掲げて展開していきます。

◆ アクションプラン推進の基礎となる組織基盤強化

 これらのアクションプランを着実に実施するため、県社協では「組織強化」「調査・研究機能の強化」「職員育成」「財政基盤強化」の4本柱を中心に、組織基盤の強化に取り組みます。局内を横断した検討の場の設置をはじめ、全期間を通じて、役員・会員と共に計画を推進できるよう、礎となる組織管理体制・業務管理体制の確立を目指します。

2025年のひょうごの福祉に向けて

 以上、本計画の概要をお伝えしましたが、今号で紹介したのは一部に過ぎません。
 本計画の核となる基本目標「つながりで笑顔輝く 共生のまちづくり」は、県社協の取り組みだけでは実現できません。個性豊かな兵庫県で、本紙読者である社協や福祉施設、民生委員・児童委員、NPO などが一緒に共生のまちづくりを目指すには、課題やニーズを基に、“目指す地域社会の未来像”を、県域・市町域と重層的に関係者で話し合い、協働で取り組みを進めることが重要です。
 また、本紙「ひょうごの福祉」は、本計画の協働推進目標の視点を踏まえながら、今後も社会福祉の動向、県内の多様な実践、県社協の取り組みを発信し続けます。そして、共生のまちづくりに向けた情報提供と課題提起の一助となり、生き生きと輝く実践と読者との懸け橋になることを目指します。この特集で紹介した2025年計画と併せ、リニューアルした「ひょうごの福祉」もよろしくお願いいたします。

「ひょうごの福祉」はこれからも県内の多様な実践を伝えていきます

次号より新コーナー「笑顔輝く 共生のまちづくり」が始まります

 県社協はこれまで、「ストップ・ザ・無縁社会」全県キャンペーンを推進協議会の皆さまと共に進め、県民フォーラムの開催や地域フォーラムの開催支援、本紙での情報発信などで無縁社会に警鐘を鳴らしてきました。
 この度、地域共生社会の実現や「ポストコロナ社会」の動向も見据え、同キャンペーンの取り組みや実績を活かして、次号より新コーナー「笑顔輝く 共生のまちづくり」の連載を始めます。

 共生のまちづくりには、さまざまな分野の関係者や多様な主体との連携が欠かせないことから、県内各地で進められる、2025計画に掲げた協働推進目標に関する取り組みを紹介します。SDGs のように、さまざまな主体ができることに取り組み、共生のまちづくりの輪を広げることを目指します。

共生のまちづくりを目指して一緒に取り組みましょう

協働推進目標1
「一人ひとりの尊厳が守られるまちづくり」の取り組み

協働推進目標2
「多様性を認め合い、“自分らしさ” が発揮できるまちづくり」の取り組み

協働推進目標3
「誰もが参加・参画し、多様なつながりのあるまちづくり」の取り組み

協働推進目標4
「みんなの暮らしを包括的に支えるまちづくり」の取り組み

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