私の物語 – 足立 里江 さん(看護師・主任介護支援専門員)

 このコーナーでは、地域福祉のキーパーソンや実践者・当事者らのエピソード・思いを紹介していきます。

“落ちこぼれの私”だからこそ“できること”を求めて

足立 里江(あだち さとえ)さん
朝来市健康福祉部 ふくし相談支援課(看護師・主任介護支援専門員)

Personal History

平成元年
看護学校を卒業。病院の看護師として就職
平成4年
生野町(現朝来市)の在宅介護支援センターに就職
平成18年
朝来市地域包括支援センターへ異動
令和元年〜
朝来市ふくし相談支援課副課長として高齢者・障害者福祉に携わる

私のモットー

“よい支援”を受けた援助者こそが、 “よい支援”を提供できる

原点は新人ナース時代に

 もともとマイペースで要領の悪い私。故郷を離れて総合病院の看護師になりましたが、3つ何かをしようとすれば1つ忘れ、理解にも時間がかかる新人でした。同期は、次々と仕事を覚えて夜勤も任されましたが、私は任せてもらえません。技術を知識で補おうと懸命に勉強しましたが、周りをハラハラさせるのは相変わらずで、寮でよく泣いていました。
 そんな半年が過ぎた頃、見守ってくれていた看護師長が私に言いました。「あなたは今、失敗続きでつらいかもしれない。でも、たくさん失敗した人は、その理由や失敗した人の気持ちがわかる。そういう人こそ、将来、“人を育てることができる”のですよ」。

看護師長の言葉を胸に30年

 その後、双子の出産を機に福祉行政へ転職し、在宅介護支援センターを経て地域包括支援センターの主任介護支援専門員 ※1 の道を歩みました。
 在宅介護支援センターでは、地域と協働する仕事の醍醐味を知り、また、個々のケースに向き合う中では、クライアントの感情に揺さぶられながらも支援の経験を積みました。
 地域包括支援センターに異動すると、多くの新人ケアマネジャーが、昔の私と同じように悩み、自信を無くしている姿を目にしました。その姿を見ると、かつて看護師長がまだ見ぬ私の力を見出してくれたように、「私も力になりたい!」という思いが湧き、ケアマネジャー同士がつながり、支え合い、学び合える環境づくりが必要だと感じました。その思いから取り組んだのが「ケアマネジメント支援会議」の立ち上げです。そこでの事例検討を通じて、学びと気づき、苦悩をも共有してきた今、朝来市のケアマネジャーの実践力の高さや結束力の強さは、私が最も誇れることの一つです。
 あの日看護師長がくれた言葉は、単なる励ましだったのかもしれませんが、私の職業人生にとっての道しるべとなりました。今後もケアマネジャーやさまざまな専門職、地域の人たちと一緒に悩みつつも、私にできることを求めていきたいです。

※1:
主任介護支援専門員には、新人ケアマネジャーの指導・育成・相談、地域の福祉課題の発見や解決に尽力することなどが期待されている。

現在の職場にて、仲間とともに
平成29年に出版した書籍
ケアマネジメントにおける
「援助関係の軌跡」
クライアントとの間にあるもの

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