2022年7-8月号
県内に拠点を置いて活動する自助グループを紹介します。
うつ病当事者が抱える思いや生きづらさ、経験などを語り合い、社会復帰の契機としてもらうことを目的とした自助グループ「曇りのち晴れ」。かつては当事者の立場で参加し、現在は世話人代表である吉本浩士さんにお話を伺いました。
Q1.
グループの立ち上げやご自身が参加したきっかけは
A.
「曇りのち晴れ」は、ひょうごセルフヘルプ支援センターにうつ病グループの問い合わせが相次いだことから、平成18年に開設されました。
私が初めて訪れたのはおよそ11年前です。当時の私は、うつ症状に苛まれ、荒んだ生活をしていました。そうした渦中で、私は人や社会とのつながりを持とうと、自分を取り戻すために助けを求めました。それは生への本能、渇望だったと思います。
初めて参加した時のことは今も鮮明に覚えています。何もわからずに突っ立っている私を、何も問わずにそっと空席に促してくれた時の安堵感は、人生のターニングポイントです。以来、「曇りのち晴れ」の活動は私のライフワークです。
Q2.
現在どのような活動に力を入れていますか
A.
現在は2週おきに定例会を開催しています。
定例会の基本は「語り合い」です。「語り合い」は、参加者相互によるうつ歴を軸に、症状や思い、自身と他者との共通点や違いを分かち合うことで、わだかまりやもどかしさから解き放たれるきっかけになります。そして、分かち合う経験を重ねるほど、孤独や孤立から自律(立)につながり、心身の回復や改善に向かうことが期待されます。
また、ミニイベントとして、ベテラン参加者の経歴を生かした「ミニ講演会」、同一の事象に対して意見を述べ合う「座談会」の他、「ぶっちゃけ相談会」などを開催して評価を得ています。今後も新しい企画を取り入れてグループを活性化させていきたいです。
Q3.
社会に望むことやグループの目標は何ですか
A.
コロナ禍で心身にダメージを負い、うつ症状に苦しむ人が増えていること、また、近年は若年層に新型のうつ傾向があるとも聞きます。
グループに集う当事者たちも、時代の変化に戸惑いながらも敏感です。従前のうつ病に対するイメージやその現実から、社会のあり様とともに変わりゆくうつ病の広がり(一般化)を感じざるをえません。
うつ病というと、心身の問題と思われがちですが、実際は、生活ひいては人生の立て直しが大きな問題となります。参加者の語りのほとんどが人生相談なのは、身の置き所や将来への不安、つまり生きづらさの表れなのです。
時代が変わっても、人との出会いと語り合い、未来への希望が、人に「ひとりじゃない」ことを実感させます。「曇りのち晴れ」はそうした居場所であり続けたいと思います。