2021年11-12月号
県内に拠点を置いて活動する自助グループを紹介します。
「話す」だけでなく、人によっては「読む」「書く」ことなども困難になる失語症の方やその家族の団体として、さまざまな活動に取り組む「しゃべろーよ」副理事長の田中加代子さんに伺いました。
作品展“ゆめひろばインさんだ”での会員のみなさん
古民家を利用したカフェ“トークゆうゆう”
Q1.
グループを立ち上げたきっかけは
A.
昭和57年、夫(現理事長)が35歳で失語症となり、長い闘病とリハビリを余儀なくされました。この過程で失語症者同士の交流に励まされましたが、阪神・淡路大震災で失語症者が互いに孤立したため、同年7月、失語症者とその家族9名で任意団体「グループ しゃべろーよ」を三田市で発足させました。
若くして失語症となった人の生活再建を手探りで検討しつつ、「当事者の親睦、交流、情報交換」「社会参加の場の創出」「失語症に関する啓発や支援者育成」に先進的に取り組みました。平成14年に開催した「失語症会話パートナー養成講座」修了者のグループへの協力が、大きな助けとなってきました。
Q2.
現在どのような活動に力を入れていますか
A.
平成16年に社会参加の場として小規模作業所を設立。平成22年のNPO法人化を経て地域活動支援センターを運営していましたが、平成30年に就労継続支援B型事業所「トークゆうゆう」に移行し、活動の中心としています。
失語症者と支援者が集う場として、毎年開催する作品展「ゆめひろば展インさんだ」「ゆめひろば交流会」には多くの方に参加いただいています。また、失語症カフェの開催や毎週木曜日には言語聴覚士による相談会も実施しています。希望があればご連絡ください。
Q3.
社会に望むことやグループの目標は何ですか
A.
平成30年に「脳卒中・循環器病対策基本法」が制定され、やっと失語症者への公的な取り組みが始まりました。県でも3年前から「失語症者向け意思疎通支援者養成講座」が開催されましたが、今後、手話通訳と同じように派遣事業が広がることを期待しています。
また、多くの言語聴覚士が医療機関に所属し、地域の活動に寄り添える専門職が少ない現状があります。180日を超える長期のリハビリも必要で、これからも当事者・家族の立場から気付いたことを伝えたいと思います。私たち以外にも県内で失語症者のグループがありますが、家族の高齢化も課題です。今後も言葉のバリアフリー社会を目指していきます。