私の物語 – 田中 いづみ(たなか いづみ)さん

 このコーナーでは、地域福祉のキーパーソンや実践者・当事者らのエピソード・思いを紹介していきます。

ありのままの自分が受け入れられる社会に

田中 いづみ(たなか いづみ)さん
保護司(灘区保護司会 副会長)

Personal History

平成8年
PTAの活動を通じて青少年育成協議会(青少協)の委員に就任
平成15年
保護司に就任
平成16年
民生委員児童委員に就任
平成27年
灘区保護司会副会長に就任

私のモットー

よりそう心を大切に

人とのつながりに導かれ保護司へ

 青少協(※)の夜間パトロールで共に活動していた保護司の方に勧誘されたのが、保護司になったきっかけです。犯罪や非行をした人の立ち直りを支えるために自宅で面接をしますが、いろんな人が家に来ること、また、私には難しいのではと感じたことで半年ほど悩みました。しかし、「立派な大人になって子どもを連れて来てくれた」「夏祭りで声を掛けてくれた」などの話を聞き、人とつながる素敵な活動だと思い、主人も背中を押してくれて決心しました。
 保護司を始めた頃、周りに保護司であることを明かしてはならないとされた時代でした。誰にも相談できず孤独でしたが、今では保護司会の組織も充実し、サポートセンターも整備され、守秘義務を守りつつ保護司同士の情報交換も活発になりました。

自分を見つめ直し、前に進むサポート

 初回の面接では、目を合わせてくれず、会話のキャッチボールもままならない場合もあります。約束を破られることも多々ありますが、月2回の面接に向け根気強くコンタクトを取り、面接を繰り返して徐々に対話ができるようになります。
 私は、「困っていることはありませんか」と必ず尋ねます。自分の過去を周りの人にオープンにできないために、保護司にしか話せないことも少なくありません。聞いてほしい、共感してほしいという気持ちを受け止めることが役割だと感じます。そして、困りごとを話すことで、面接が自分を見つめ直す時間になるようお手伝いしています。
 中には、共犯だった友達と離れられず再犯する人もいます。一緒にいることで仲間と同じ行動を取ってしまうのですが、人に流されず、自分をもっと大事にしてほしいとよく話していました。一方、少年院に入る前に自分のなりたかった職業に就きたいと、出院後学び直して、夢を叶えた少年に寄り添えた経験は大変貴重でした。

今のありのままの姿を受け入れた見守りを

 非行少年や犯罪者と言われる人たちは、地域に溶け込んで生活したいと思っていても、社会になじむのは難しいのが現状です。
 本人の心の壁のせいかもしれませんが、過去に犯した過ちのせいで社会に受け入れられない場面は多くあります。就職活動はもちろん、本人の知らないところで噂が広がることもあり、刑期を終え、教育を受け終えて正しく生きようとしている人にとって社会の壁は高いです。過去のことよりも、今のありのままの頑張っている姿を受け入れて温かく見守る。そのような社会の関わりを大切にしたいと思います。
 ※青少協:青少年育成協議会。青少年の健全な育成を目的に神戸市内(灘区では各中学校区)に組織されている

「社会を明るくする運動」では、更生保護への理解が広がるよう啓発しています

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