2024年7-8月号
このコーナーでは、地域福祉のキーパーソンや実践者・当事者らのエピソード・思いを紹介していきます。
人生一度きり
幼稚園教諭だった母の影響で、保育の世界に自然と憧れを抱くようになりました。ボランティアで関わった神戸YMCA福祉会の雰囲気に惹かれて就職を決めていましたが、いつもどおり短大に向かっていた途中で交通事故に遭い、意識が戻ったのは二週間後でした。
当時は少し先のことも想像できない状態でした。内定を取り消さずに待ってもらえていることを母から聞きましたが、当時は本当に働けるとは考えていませんでした。
ただ、神戸YMCA福祉会が私のことを信じて待ち続けてくれた事実が希望となり、やがて「先がある」と思えました。
その後退院し、自立生活訓練センターへ入所したことを機に、実際に復職している方の姿を見て、保育園で働く目標が少しずつ明確になりました。リハビリで出会った人たちからは、車いすツインバスケットボールや自動車を運転して旅行に出かける楽しさを教わりました。その経験は今の生活にも生きています。
事故から5年余りを経て、事務職員として保育園に就職を果たしました。最初は、私自身も職場も手探りでの勤務でした。どれくらい役に立てるのか不安もありましたが、日常の事務仕事に加え、行事の飾りつけの作成など、園の運営に必要な準備も行っています。
事務職員として働き始めて8年が経ちますが、この保育園に出会い、働けること自体に喜びでいっぱいです。また、園児や保護者の皆さんが私のことを自然と受け入れてくれる環境や、私の姿を見つけた子どもたちが扉を開けに走ってきてくれる思いやりが特に嬉しいです。
この体だからと諦めるのではなく、どうすればできるかを考えてきたこと。また、ポジティブにいろいろなことに挑戦したことで、道が開かれたと感じます。講演会などに招かれた際は、聞いてくれる人が何かを感じてくれたらと思いながら、経験を自分の言葉で話しています。
私は、障害があることは、不幸なことではないと思っています。怪我をして良かったとは思いませんが、これがなければレールの上を歩むだけの人生でした。遠回りはしたけれども、毎日人の優しさに触れ、気づきや出会いのたくさんある濃厚な人生を送ることができています。
これからも保育に携わることに感謝し、良いと思えることに前向きに挑戦しながら歩んでいきたいです。