2025年5-6月号
このコーナーでは、地域福祉のキーパーソンや実践者・当事者らのエピソード・思いを紹介していきます。
今、少しずつできる歩みを進めたい
会社員として働いていた時にメンタルを崩し、復職や転職、入院などを重ねました。特に、入院中は心の支えである家族や友人、社会から切り離され、強い孤独感がありました。退院後も、人と話すことが辛くひきこもりになりましたが、主治医に紹介された「居場所」に通い始め、仲間や職員の方と少しずつ話せるようになり、目の前が広がる思いでした。
支え合うことの大切さを実感し、社協や地域の支援者に相談して仲間と共に自助グループをつくりました。派遣の仕事をしながら自助グループの活動を続けるという、二足の草鞋にしんどさも感じましたが、それでも「自分の経験を精神保健福祉の分野で生かしたい」という思いが消えず、今の法人に相談員として就職しました。
当事者の気持ちが想像しやすいからこそ、私の場合、入院はできるだけ勧めたくないですし、正論で問いただすことは避けるなど、相談者の気持ちに寄り添いながら支援したいと思っています。
時には相談に来た方とお互いの経験や悩みを話し合い、支援者という立場を超えて支え合うこともありました。相談者に自己開示をしすぎたことで、病気・障害と付き合いながら生きることに不安を抱かせてしまうといった失敗も経験しました。以降は何を話すか、話さないかを見極めて支援をしています。
支援者としての活動を経た今、社会に対して当事者の思いや理想をそのまま伝えるのではなく、その思いに気づいてもらうにはどうすれば良いかを考えるようになりました。当事者と支援者の橋渡しを担っているように感じていて、難しさもありますが、それが面白いところだとも思います。支援者であり、当事者でもあるからこそ、客観的な視点を持つことが大切だと感じています。
入院してもすぐに家族や友人に会える環境や、当事者同士で語り合える場所が全国にあればという思いを持ち続けており、私自身、働きながらピアサポート(※)に関する研修講師をしたり、書籍を執筆したりと当事者仲間のための活動に携わっています。「障害があっても楽しく」というより、普通の人と同じように苦しんだり楽しんだりしながら過ごせる社会になっていけばと思います。
※ピアサポート(Peer Support)
…同じような悩みを持つ仲間(peer)同士が支え合う活動