2025年3-4月号
“笑顔”と“共生のまちづくり”につながる取り組みをレポート
介護付きシェアハウス「はっぴーの家ろっけん」は、高齢者を中心とした住まいでありながら、年齢・性別・国籍もさまざまな地域の人が集まる場所になっています
神戸市長田区にある介護付きシェアハウス「はっぴーの家ろっけん」は、開設前に行った住民との「この地域に何が欲しいか」という意見交換を経て、「みんながつながれる拠点が欲しい」「子どもだけ、大人だけじゃない、ごちゃまぜの場所がいい」などの声をもとに、高齢者以外も自由に出入りできる場所として運営することとなりました。
高齢者が多く暮らすろっけんのリビングルームには、入居者に加え子どもや学生、主婦など、顔のつながった地域の人たちが出入りしてくつろいでいます。ろっけんでは、誕生日やクリスマスパーティーなどが入居者と地域の人たちが混じって賑やかに開かれます。これらイベントの多くは、スタッフではなく、ここに集まる人たちが自主的に開くのも特徴です。
この“ごちゃまぜ”なシェアハウスができた原点には、ろっけんを運営する首藤義敬さんの、「生まれ育った地域の強みである人とのつながりを取り戻したい」との思いがあります。阪神・淡路大震災からの復興が進む中、地域のつながりが希薄になったと感じた首藤さん。起業して手掛けた空き家の再生を通して高齢者の暮らしを目にし、人とつながり自分らしく暮らせるシェアハウスを構想し、開設以来、入居者と住民の声を反映した運営を続けています。
ろっけんが大切にするのが、「どう生きたいか」という入居者の希望に寄り添い、暮らしの選択肢を広げることです。例えば、車いすで暮らす人が希望したアウトドア体験では、実現に向けて何ができるか考え、車いすごと木登りをするツリーイングに挑戦しました。また、「どう生きたいか」の最終段階である看取りに力を入れ、その人の歩みを知り、家族への聞き取りを通したオーダーメイドの葬儀を、ろっけんに関わる人たちと一緒に行っています。
首藤さんが「30年後に何を残せるのか。日々の活動で、やりたいことがいっぱい」と語るように、最近は、空き家をリノベーションした見守り付き賃貸住宅も開設しました。ろっけんは地域のさまざまな人が交わる場であると同時に、一人一人の望む暮らしが尊重される場所です。地域の賑わいと人と人とのつながりを取り戻すためのろっけんの挑戦に今後も注目です。
テレビを見る高齢者の方、漫画雑誌を読む小学生と、みんなが思い思いにくつろぐリビングを見て、「ろっけん」が地域に自然に溶け込んだ場所であることを感じました
はっぴーの家ろっけん(運営:株式会社 Happy)