2024年11-12月号
“笑顔”と“共生のまちづくり”につながる取り組みをレポート
養父市内のあるショッピングモールの一角で障害者の地域活動支援センターを運営するNPO法人がっせぇアート。作品展や喫茶など、さまざまな活動を展開しています。
がっせぇアートでは、障害者の作品展「がっせぇアート展」を平成22年度から毎年開催しています。作品展を始めたのは、団体を運営する茨木さん夫妻の娘で知的障害のある朝日(あさか)さんが、来客の似顔絵を描き、絵を通して会話をしていたことがきっかけです。この姿を見た、母のやよいさんは、「絵が持つ『がっせぇ(※)』力を実感した」と振り返ります。
その後、朝日さんは県の芸術祭での受賞を機に本格的に絵画を始めましたが、当時、但馬地域に障害者の作品展はありませんでした。「娘以外にも同じような人がいるはず」と、やよいさんらは友人らと実行委員会を立ち上げました。障害者の事業所に出品を呼び掛け、第1回アート展を開催。15回目を迎える今年は278名の作品が集まり、市内の看護専門学校の学生もボランティアとしてアート展の運営を支えます。
「他者の評価より、純粋に楽しんで創られた作品は観る人の心に響く。障害の有無に関わりなく、アートがボーダレスな関係をつくっている」と朝日さんの父、隆宏さんは力を込めます。
※但馬弁で「すごい」の意味
アート展を始めた頃から、がっせぇアートでは、障害者に創作活動などの機会を提供する地域活動支援センターの設置を市に要望していました。
特別支援学校を卒業したアート展の参加者からの「働きたいけど行き場がない。描きたいけど居場所がない」という切実な声を市に届けるなど活動を重ね、平成29年に地域活動支援センター「オンサルデ」の開設が認可されました。現在、20名がオンサルデを利用しており、カフェでの就労体験やアトリエでの創作活動を支えるほか、ちょっとした情報交換として利用者同士が語り合う場づくりなど活動は多岐に渡ります。
「アート展を続けることで、創作活動の価値への理解が広がった。場の提供やアートの魅力発信を続けていきたい」と語るやよいさんと隆宏さんは、次世代とともに活動を続けます。
アート展への出展を呼び掛けていた当時、施設の職員や親が気に留めていなかったものが「作品」に生まれ変わったという茨木夫妻。私も自分の子どもらの作品(落書き)を通して会話をしてみようと思いました。
NPO法人がっせぇアート