2021年11-12月号
“笑顔”と“共生のまちづくり”につながる、さまざまな団体の実践をレポート
障害がある人の入浴や外出などを支えるヘルパー派遣のほか、障害の有無をこえて地域住民と自然に交流する仕掛けづくりをしている尼崎市のNPO法人「月と風と」の活動を紹介します。
コープこうべ尼崎近松店の1階にある「チャリティショップふくる」。ここは、障害のある人が「好きなこと」「得意なこと」を発揮して働ける場をつくろうと「月と風と」が立ち上げた、服と小物類を売るお店です。地域住民から寄付された洋服を、障害のある人たちが販売します。
体を動かしづらい人もおしゃべりが好きな人も、誰もが働きやすい店にしようと、構想段階から住民や学生たちと話し合い、平成31年にオープンさせました。
車いすで生活する店員のAさんは、「おしゃれが好きだったけど、服飾の仕事は諦めていました。今はここで仕事ができ、私が出勤しない日も気に掛けてくれるお客さんもいて嬉しい」と声を弾ませます。
昨年のコロナ禍では、直に接客がしづらかったことを逆手にとり、「AI(あんた!いいやん!)コーデ」を開始。これは服の購入希望者から送られてくる写真をもとに、店員がコーディネートを考え、服や小物を詰めた福袋に手紙を添えて届ける新たな販売方法です。服を受け取った人がSNSでこの取り組みを発信するなど、会えなくてもつながれる工夫があります。
高い位置にある商品はお客さんに取ってもらったり、服はお客さんが畳んだりします
制度化されたサービスを提供するだけではなく、面白いことを実現しようとNPOを立ち上げた代表の清田仁之さん。「障害でたくさんのことを諦めてきた人が、少しずつ『こんなことやってみたい』と変わるのが嬉しい」と話します。
障害のある人の暮らしも地域社会の中に当たり前にあるので、自然に交わり合う機会をつくろうと取り組み始めた活動の一つが、「おふろプロジェクト」です。障害のある人が銭湯に行き、他のお客さんとお湯に浸かってリラックス。共に温まりながらおしゃべりを楽しんで、「地域にこんな人がいるんだ」と改めて気付いてもらう機会にしてきました。
誰もが気にかけあえるまちづくりの第一歩になればと、さまざまな「おもろい!」と思える仕掛けを生み出す「月と風と」の活動は今後も続きます。
銭湯を楽しんだ後、笑顔でパシャリ!「おふろプロジェクト」での一枚
「月と風と」の職員は7名。太陽の光を受けて光る「月」のように、誰かの力を借りながら誰かの道を照らし、「風」のように楽しく優しい音楽をみんなと奏でたい。そんな願いを込めた名前の通り、色々な人とつながることでアイデアを形にしているのだと感じました。
NPO法人 月と風と