【特集】県民ボランタリー活動のさらなる充実を目指して ~ひょうごボランタリープラザの取り組み~

災害ボランティア活動
ひょうごボランタリー地域づくりネットワーク会議の様子

ぽっかぽか共生マラソンの様子(認定NPO法人ぽっかぽかランナーズ提供)

健康サポート・あいとわの会による太極拳体操(プラザセミナー室にて)

 阪神・淡路大震災における救援・復興活動の中で広がったボランティア活動はその後、さまざまな分野に広がり、地域生活や災害時にはなくてはならない存在となりました。
 今回の特集では、それらの活動を支えてきた、ひょうごボランタリープラザの取り組みについてお伝えします。

 ひょうごボランタリープラザ(以下、「プラザ」)は、阪神・淡路大震災を契機としたボランティア活動の広がりを受け、平成14年6月に兵庫県が県民ボランタリー活動を支援する中核拠点として開設したもので、その運営は兵庫県社会福祉協議会が行っています。
 阪神・淡路大震災から30年近くが経過し、ボランティア活動を取り巻く環境が大きく変化する中、最近のNPOやボランティア活動の動向、プラザの果たしてきた役割や期待について、兵庫県県民生活審議会会長でプラザ運営協議会委員でもある田端和彦兵庫大学副学長に、お話を伺いました。

田端和彦 兵庫大学副学長

最近のNPOやボランティア活動の動向

 以前は、法人格を有して自由な社会貢献活動を行うには、NPO法人は最重要な選択肢でした。特に、平成10年のNPO法(※1)制定後しばらくの間は、震災復興における様々な課題解決のため、県内のNPOが急速に拡大しました。
 しかし、最近では、一般社団法人など他の法人格を取得して活動する団体や、介護保険等の公的資金によって運営される事業型のNPO法人が増えています。
 また、活動面の最近の動向として、生活困窮の問題など、SDGsのスローガンである「誰一人取り残さない」ということを目指した活動を行っている団体が増えていると感じています。
 ボランティア活動の動向を端的に示すのは難しいのですが、企業や学校などの活動に組み込まれたり、高齢者の「生きがいづくり」につながるものが増えるなど、活動内容の広がりと日常化が進み、以前のような「社会奉仕として歯を食いしばって頑張る」といったボランティア活動のイメージが大きく変化してきたのは間違いありません。

プラザが果たしてきた役割

 プラザが果たしてきた大きな役割は、県内各地に中間支援組織(※2)を育ててきたことです。プラザが開設された当時の参画と協働というのは、行政と民間の間に中間支援組織があるとの感覚でしたが、プラザ自身が中間支援組織としてNPOとNPO、NPOと市民を結び付けてきました。また、このような観点で中間支援の必要性を訴え、県下に多くの中間支援組織を育成しました。
 加えて、プラザはコミュニティで活躍する団体やグループへの支援を通じて、地域の底力をすくい上げる役割を果たしてきました。本来、市町の役割というご意見もあるかもしれませんが、全県域においてあまねく平等に団体への支援活動を行い、特定の分野に偏ることなく県域全体でコミュニティ活動を促進してきました。
 また、これら中間支援組織やコミュニティで活躍する団体等の活動支援と、災害ボランティアバスの運行や市町の社協が担うことの多い災害ボランティアセンターの運営を行うコーディネーターの育成などの災害支援活動を結び付け、地域に「災害の備え」の考えを根づかせ、いざという時の受援力を高めるといった役割を果たしてきたことも、災害を経験した兵庫らしさを活かしたプラザの大きな役割と言えます。

プラザへ期待すること

 海外の事例に接していると、いろいろな課題に立ち向かっているNPOがあります。とりわけ、多くの課題を抱える開発途上国などではNPOが地域住民の生活を安定させるアンカーとしての役割を担っている。これらのNPOは柔軟に様々な案件に対応し、「誰から見ても妥当と思われる状況を創る」という役割がある。そういう意味で、NPOの活動には大いに期待しており、プラザには、新たな課題に挑戦するNPOの創設支援や活動支援を先導的にやってほしいと思っています。幸いにして職員の皆さんが、その辺をよくご理解していただいていて、例えば、中間支援を新しくつくるプログラムやフロンティア助成とか、これまでもずっとやってこられてきたので、その姿勢はずっと貫いていただいて、兵庫県において先端的な旗頭を率いてくれることを期待しています。

※1 NPO法:「特定非営利活動促進法」のこと。
※2 中間支援組織:NPO法人をはじめとする団体の活動を支援する組織のこと。

プラザの取り組みについて

 住民の暮らし方や価値観の多様化に加え、人口減少社会において、県民や地域が抱える課題も多岐にわたるなか、より良い社会を実現するため、県内のボランタリーセクターはさらに力をつけ、課題解決に向けての役割を担うことが期待されています。
 プラザは、県内のボランタリー活動全般の全県的支援拠点として、「地域支援拠点や中間支援組織に対する支援」、「情報ネットワークの基盤強化」、「多彩な活動資金の支援」の3つの活動方針に基づき、以下の6つの柱を中心に事業を展開しています。

①交流ネットワーク

 「ひょうごボランタリー地域づくりネットワーク会議」や「市町・市区町社会福祉協議会連携等会議」など、NPO、企業、大学、市町社協、県・市町など地域を構成する多様な主体が参画し、情報収集・意見交換を行うセミナーや会議などを開催し、連携促進、各地域間のネットワークの形成を図ります。

②活動資金支援

 草の根のボランティアグループ・団体、NPO法人などが実施する活動に対して資金支援を行うとともに、助成事業実施団体が一堂に会し、意見交換により事業成果を共有する「ひょうごボランタリー基金助成報告会」を開催し、活動の活性化を図るとともに、地域の課題解決への取り組みを支援します。
【助成制度】

  • 県民ボランタリー活動助成:法人格を持たないボランタリー活動団体の自立を支援するための助成(上限額:2万円/件)
  • 中間支援活動助成:地域において中間支援機能を担っている団体を支援する助成(上限額:50万円/件)
  • 地域づくり活動NPO事業助成:NPO法人等による地縁団体等と連携した、機動力・専門性などを活かした地域づくり等の取り組みを支援するための助成(上限額:50万円/件)

③情報の提供・相談

 団体、NPOなどへの情報提供、相談の支援拠点として、専門的な資料の閲覧、印刷機器・セミナー室などの貸し出しを行うほか、メールマガジンの発行、NPO法人の設立や運営に関する相談業務を行います。
 また、県内のボランタリーセクターに関わる必要な情報(イベント、セミナー、ボランティア活動、助成金、活動団体の情報等)を、プラザホームページ「コラボネットひょうご」にて発信することにより活動を支援します。

④人材養成

 ボランタリー活動の担い手の拡充やNPO団体スタッフの育成支援を目的に、NPO法人の認証手続き、コミュニケーションマナー、NPOの役割などをテーマとした動画を作成し、オンデマンド方式で配信します。
 また、市区町社協の災害救援支援担当者など、災害ボランティアセンターの運営に携わる者を対象に、多種多様な団体・機関と連携し、被災者中心・被災地主体の復興にむけての支援について学ぶ、災害ボランティア連携訓練や災害ボランティアコーディネーター養成研修を実施します。

⑤調査研究

  ボランタリー活動に関する社会的な課題や支援方策について、さまざまなテーマを設定し、調査研究を実施します。

⑥災害ボランティア活動の支援

 災害時における災害救援ボランティアが最大限の力を発揮できるよう、支援関係機関・団体による迅速かつ効果的な支援体制を構築するため「災害救援ボランティア活動支援関係団体連絡会議」を設置し運営します。
 また、被災者の生活の早期復旧、自立を支援するため、被災地でボランティア活動を行うグループを対象に交通費等の一部を助成する「大規模災害ボランティア活動応援プロジェクト」を令和元年度から整備しているほか、東日本大震災などの被災地支援活動を行う県内の高校生、大学生、NPO等の若者を主体としたグループに助成を行う「ひょうご若者被災地応援プロジェクト」を実施します。

プラザからのお知らせ

ホームページを大幅にリニューアル

 プラザホームページが令和6年1月から「コラボネットひょうご」として大幅にリニューアルしました。地域活動やNPO活動に取り組む団体、また、これらに参加する県民が、さまざまな情報を簡単に分かりやすく発信、入手することができます。
 見やすさを重視してデザインを刷新し、スマートフォンからの閲覧、投稿など操作性を向上させ、使いやすいものになりました。
 また、これまでの「イベント情報」「セミナー情報」「ボランティア情報」「助成金情報」に加えて、新たに「団体からのお知らせ」というカテゴリーを新設しました。クラウドファンディングのお願い、調査研究成果の公表、求人情報など、団体の自由でマルチな情報を掲載することができます。
 投稿するためにはプラザへの登録が必要です。また、登録いただいた団体はセミナー室などプラザの各施設を無料でご利用いただけます。ぜひご活用ください。

NPOのエンパワーメントにつながる動画を制作

 県内のNPOなどの組織力強化、人材育成、モチベーション向上につなげることを目的に、それぞれのテーマにあった動画を作成しました。オンデマンド配信により24時間いつでもご視聴いただけます。ただし、視聴いただくには初回のみプラザホームページから申し込みが必要です。(~令和6年3月31日まで公開)
 詳しくはプラザホームページ「コラボネットひょうご」の[お知らせ]をご覧ください。

「3つのテーマで動画を配信」

①「NPO法人認証手続き定款作成のポイント」

所轄庁への認証申請において、特に書き間違いや修正が多い「定款」について、NPO法人の手引に基づきポイントをわかりやすく説明しています。
「NPO法人の手引 1 設立・運営編(2022年3月改定)」に基づき、兵庫県県民躍動課協力のもと作成。

②「~好感と信頼を得る~コミュニケーションマナー」テーマ別に4編。

NPOや団体等のスタッフが、地域課題を抱える人に寄り添いながら活動を行うため、好感や信頼を得ることにつながる対人マナーの向上・心構え・コミュニケーション技術を学べる内容です。
講師:言の葉OFFICEかのん 代表 
   川邊 暁美 氏

③「NPOの役割を今一度考える」

NPOや団体等のスタッフが自団体の活動を見つめ直し、支援が必要な人や地域(=社会)が幸せ(=福祉)になるための活動について考える機会となる内容です。
講師:兵庫県対人援助研究所 主宰
   稲松 真人 氏

プラザホームページ
「コラボネットひょうご」はこちらからご覧ください。

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